
今年は桜の季節が長かったので、存分に春の訪れを満喫できた。反対に、初夏を思わせる暖かさと花冷えとは良く言ったものだと感じさせる寒さが交互に来たため、身体の変調に悩んだ方も多いだろう。
そのような中、いよいよゴールデンウィークの到来である。今年の連休では、連続して○日休む方もいらっしゃることでしょう。一年でも最も素晴らしい季節といえる5月の休暇は何といっても嬉しいもの。自然と心が浮き立つのも頷ける。
タイトルにもあるように、今回は「色彩」のマジックについてお話したい。以前は電車の窓から、色とりどりに鯉のぼりが風にそよぐ様を見ることができたが、最近ではほとんどその姿を目にしなくなってしまった。鯉のぼりはもちろん形からもすぐわかるが、遠くからでも認識できるのは、間違いなくあの独特のカラフルな色のためだろう。
同じように、私たちは日常生活で、色彩からじつに多くの影響を受けている。例えばお昼時、コンビニエンスストアに行くと、お腹が空いていることもあって、思った以上に買い込んでしまう・・・という経験はほとんどの方にあるだろう。じつは商品のパッケージはメーカーにとって、消費者である私たちに対する最も重要なコミュニケーションツールといえる。最近は消費者ターゲットの絞込みが進んで、個性的な商品も登場するようになったが、それでも全般的に、赤や黄色、オレンジのパッケージが多いことに気がつく。じつは、赤や黄色には食欲をそそる効果が潜んでいる。そのため、人は無意識に明るい色、俗にいうビタミンカラーに手が伸びる。
反対に、濃いブルーやグリーンは食欲を減退させる効果があるため、従来食品にはタブーとされてきた。最近では、「濃い茶」などという渋い緑のお茶も登場し、中高年に受けているようだが、これは例外。「渋い色=濃い」を連想させることで、売り上げを伸ばしているが、食欲と比較的関連の薄い商品であること、プラス日本人独特の「お茶」に対するイメージのためといえるだろう。
もちろん、このメッセージ性のある「色彩」パワーは、何も食品に限ったことではない。コミュニケーションツールとして、生活のあらゆる場面で私たちの心理に大きな影響を与えている。
「色彩」のマジックというタイトルにまさにぴったりの例がある。まったく同じ大きさ(体積)で同じ重量であるが色の違う2種類のダンボール箱があるとする。1種類は黒、もう1種類は白。それぞれ10個のダンボール箱を別の場所に移動してもらいたいと頼んだと考えて欲しい。多くの人に実際に体験してもらうと、ほとんどの人が白いダンボール箱を選ぶ。何故だろう。それは白い箱の方が軽く感じるというのが理由。これを体感重量という。引越しやスーパーで目にする野菜などが運ばれるダンボールを想像してみて欲しい。白に文字が書いてあるものが多いことに気がつくことだろう。黒いダンボール箱というのはめったに見かけない。引越し用では皆無といえる。実際に、同じ数の箱を運んでも、黒の箱を運んだ場合の方が、疲れ方が激しいという実験結果もあるほどだ。まさにマジックそのものではないだろうか。
このマジックは温度にもあてはまる。お気づきの方も多いだろう。体感重量の次は体感温度という訳である。この場合も、同じ温度の水を2種類用意する。1つは青、もう1つは赤。同じ温度の水でも、青と赤では体感温度にして3度の差があるといわれている。実際に手を入れてもらうと、ほとんどの人は青の方が冷たいと感じる。もちろん体感といっても、視覚からの情報に身体の感覚が影響を受けているということなのであるが。
この色彩調節の機能を上手に利用して、エネルギーの省力化を図っている企業もあるほどだ。電化製品にもこの体感温度を巧みに利用した商品が多く見られる。最近では、オフィス用の小型以外には見かけることが少なくなったが、夏に利用される扇風機はどうだろうか。昔から青や白が定番ではないだろうか。反対に、冬に多く見かけるようになった扇風機型の温風暖房機やホットカーペットなどはベージュや温かみのある色が多いことも同じ理由からである。オレンジ色に燃える暖炉は見ているだけで暖かくなるように感じる。
「色彩」のマジックはインテリアにも生かされている。このお話は次回に是非ご紹介したい。毎日の生活で私たちはじつに多くの色に囲まれて暮らしている。この色彩を生かさない手はない。コミュニケーション美人は色彩もおおいに味方にして欲しい。
芳賀 日登美
社会言語学修士、国際コミュニケーション修士。
2008、2009年筑波大学大学院システム情報工学研究科(MBA・MPPコース)非常勤講師。
リーダーシップ担当。
経済産業省「アジア消費トレンドマップ研究会」コアメンバー。